観光
私がゴールド・コーストに住んでいたころは、世界で有数のリゾート地として、日本からの観光客が後を絶ちませんでした。
多くのお土産店がサーファーズ・パラダイスでオープンしましたが、日本企業によるものが多く、それらは皆、観光客をコントロールし、収益は日本へ持ち帰るように設定されていると非難されることがありました。
日本人観光客や永住者が増えるにつれ、色々な変化が生じてきました。和食のレストランの数が増え、メニューの内容もそれまで思いもつかなかった物が含まれるようになりました。一例は、ロブスターの活け作りです。これは、RSPCAという動物保護団体が、身体を切り裂かれ、その部分がまだ動いているロブスターをお皿に並べて料理として出すことを残虐行為とし、新聞の記事で非難を受けました。日本人にとっては、これより新鮮な物は無いということになりますが。その他、魚の頭が魚屋の店頭に並ぶようにもなりました。世界の高級有名ブランドは日本の観光客が来た際のみ、ドアを開けると行くケースもありました。日本人観光客の便宜をはかるため、道路標識に日本語を加えるべきという案も出ていました。
このように、評判が良く、ゴールド・コーストは日本人観光客の理想の土地としてのステータスを持続するかのように見えましたが、よく聞かれるコメントは、いい所だけれど、何もすることが無いわね。というものでした。これは、リピート客を増やすには問題になります。ハワイと比べると、大きな違いです。日本人観光客はハワイへは行き続けています。もちろん、大きな原因のひとつは航空運賃でしたが、今では、Jetstarなどの格安運賃も出てきています。でも、日本人観光客は増えているでしょうか。
何年も前になりますが、オーストラリアの会社が輸出を考えるのは、国内であまった物を処理する場合だと聞いたことがあります。他の国に勝ってもらいたいなら、その国の人が望む物を作らねばなりません。観光客を呼び寄せたいなら、観光客が望むものを、提供するようにならねばなりません。日本人は歴史のある国へ行き、その史跡を見たり学んだりすることが、外国に行く場合、一番の目的とするという記事を読みました。残念ながら、オーストラリアでは、これは、望めません。それならば、それに変わる物は何かを探求し、リピート客を増やす工夫が必要です。
日本人観光客は普通、外国旅行でリラックスすることは考えていません。できるだけ多くの場所へ行き、ショッピングをします。家族や友人へのお土産を買わねばなりません。あるみやげ物店のオーナーが不思議そうに、訪ねたことがあります。日本からの新婚旅行のカップルが台所で使う手袋を50組も買ったがどうしてかというものでした。日本では結婚式に招待されると、現金の入った封筒を持って行きます。カップルはそれに対し、お返しをしなければならず、新婚旅行先で買ったお土産が妥当な物になります。同じような金額をもらった相手には、同じ金額のお返しをすべきで、それが、50組の手袋になったわけです。
ゆっくりと座って、リラックスする時間があると、何か損をしているような気がするのが、多くの日本人の常だと言えます。以前、クリスマスからお正月の休暇でハワイへ行っていた頃のことですが、私は、一人で海岸に寝そべって、日光浴を楽しんでいたところ、突然大型バスがすぐ側に乗り付け、多くの日本人観光客がおりてきました。皆、一斉に写真を撮り、すぐにバスに戻り、立ち去りました。男性のなかには、背広姿もありました。異様な感じがしたのを記憶しています。今では、海外旅行へ背広姿で出かける日本人はあまりいないでしょうが、それでも、旅行中スケジュールが一杯で忙しいのを好む傾向は変わっていないと思います。
帰国して、友人や知人にどんなに色々な所へ行って来たかを話すのが、ひとつの満足感にもなっているようです。特異な例かとは思いますが、アメリカへ行った男性が道路標識の写真ばかり撮っていたと聞いたことがあります。ここも、あそこも、行って来たという証拠として。
極端な例ですが、日本からの姪が初めてオーストラリアに来、短い期間にできる限り多くの場所を見せようと駆けずり回り、途中で心筋梗塞で救急車で病院に運ばれたという50代の女性もいました。
オーストラリア人が日本へ行く場合、ここ数年は特にスキーに行くケースが増えています。もちろん、東京、大阪、京都を含む、観光で有名な土地へは行っています。でも、それ以外日本には訪れる価値のある場所が多くあります。そして、地方の自治体も観光客を呼び寄せる努力をしています。
日本とオーストラリアの地方の自治体が一緒になり、お互いのプロモーションをすることにより、今までは考えられなかった観光地が生まれてくる可能性もあります。